秩父丸通タクシー株式会社は、埼玉県を代表する観光地・秩父を中心に約60年にわたりタクシー事業を経営しています。
同社は、通常のタクシーのほか、ジャンボタクシー、デマンドタクシー(乗合タクシー)、車いす専用車など計40台の車両を保有し、約50名の社員が観光客、高齢者、ビジネスマンなど多様なお客様に対応しています。
今回は、代表取締役社長・金子理恵子さんに、同社のおもてなしの取組等についてお話を伺いました。
Q ドライバーの皆さんに対する教育はどのように行っていますか。
A お客様には、気持ちよくタクシーに御乗車いただきたいと思っています。そのためには安全走行はもとより、ドライバーがお客様と円滑なコミュニケーションを取ることができるように、ドライバーを教育することが必要です。
接遇の大切さについては、朝礼などでこれまで私が自ら社員に伝えてきましたが、現状では、お客様からの苦情や御意見をいただくこともあります。改善しなければならない点は多いです。そのため、具体的にお客様からの御意見をいただいた場合は、対応したドライバーを個別に指導しています。
朝礼など皆が集まる場所で、苦情などの事例を話しても、中には自分のことだと気が付かないドライバーもいます。よりよいサービスやおもてなしを行っていくには、個別指導が必要です。接客での失敗を繰り返すことのないよう、社長の私が責任を持って社員を指導しています。
また、新人が入った際には、私があいさつの仕方や秩父周辺の観光情報などについて徹底的に教えています。
Q 観光客への対応のため、独自に行っていることはありますか。
A 社員には、県内有数の観光地・秩父のタクシードライバーとして、秩父の観光情報や郷土秩父の歴史などに精通し、お客様にきちんと説明・PRできるようになってもらいたいと思っています。
秩父商工会議所では、秩父の風土・歴史・民俗・文化などに関するご当地検定「ちちぶ学検定」を実施しています。観光地である秩父でおもてなしを行っていくには、こういった資格をもったドライバーが一人でも多くいることが重要です。
そのため、平成25年から社員にこの検定を受検してもらっています。現在、6名の社員が合格しており、上級が2名、初級が4名です。今年も6名の社員が検定を受ける予定です。
また、秩父札所34カ所の場所、特徴などを問う試験問題を私が作成し、社員に受けさせています。今年3月から12年に一度の午歳(うまどし)総開帳があり、多くの観光客が私どものタクシーを利用されると思いますので、お客様に対して恥ずかしくないようしっかり勉強させています。
Q ドライバーのおもてなしに関するエピソードなどについて教えてください。
A 毎月1日に三峯神社で『白』い『氣守(きまもり)』を頒布しているのですが、非常に人気があり、毎月たくさんの人が訪れます。あるドライバーが1日に三峯神社まで乗務した際、道路の渋滞でメーターがどんどんあがってしまいました。そこで、そのドライバーが機転を利かせ、渋滞で加算されたメーター料金ではなく平常時と同等程度の料金のみをいただいたところ、お客様はとても喜んで帰られたそうです。儲けだけを考えず、お客様に気持ち良く乗車していただくというのが大切なことだと考えています。
Q 秩父のタクシーならではのおもてなしの事例があれば教えてください。
A 秩父では電話予約してタクシーを利用されるお客様が多くいらっしゃいます。多いときは一日に10件くらい電話がかかってくることもあります。予約の電話は営業担当者が受けて、お客様をお乗せするドライバーを決めています。
電話をかけてきたお客様に好印象を持っていただけるよう、電話を受ける際は「お電話ありがとうございます」の一言からはじまり、丁寧に、きちんとした受け答えをするよう指導しています。
また、遠方からの観光客の方も多く、電話でのお問い合わせでは、お客様から地理情報や移動の所要時間などを細かく聞かれるので、きちんと受け答えができるよう営業担当者はよく勉強しています。ドライバーよりも詳しいほどです。
また、お客様から要望があれば、宿や食事の手配をしてさしあげる場合もあります。最近、遠方のお客様でリピーターとなってくださる方が増えています。このような親身な電話対応も一つのおもてなしではないかと思っています。
Q タクシーを利用されたお客様の反応で印象に残っていることはありますか。
A 観光客のお客様から「楽しかった」と手紙をいただくと、とても嬉しいです。また、前回担当したドライバーを再び指名していただくのも嬉しいものです。毎年、札所巡りで同じドライバーを指名されるリピーターの方もいらっしゃいますし、地元の方でも、荷物を家の玄関まで運んでくれて非常に親切だったと喜んで、再度同じドライバーを指名してくださることもあります。
Q 今後のおもてなしの取組について教えてください。
A すべての人に対してワンパターンで対応しても、おもてなしにはならないと思います。ものを差し上げることがおもてなしとも限りません。相手や状況に応じて臨機応変に対応し、相手に気持ちよく感じてもらえればそれがおもてなしにつながると思っています。
タクシーは、地元住民の足として利用されると同時に遠方からのお客様をお乗せすることもあります。遠方からのお客様にとっては、タクシーの運転手の印象で秩父の印象が良くなったり悪くなったりすることがあると思います。ちちぶ検定の合格者を増やして観光ガイドができるドライバーを増やし、また利用したいと思っていただけるようなおもてなしの取組を続けていきたいと思います。
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